f植物園の巣穴
読書量がめっきり減ってしまっていますが、チビチビ読んでいます。
よねむしは梨木香歩ファンですが、途中で挫折してしまう(読了できない)作品が多いのも確か。
『裏庭』(よねむしのイチオシ)や『西の魔女が死んだ』等の、童話的なものがとても読みやすくて好きなのですが、
『村田エフェンディ滞土録』などは、何度か読み始めるのですが、必ず途中で投げ出してしまいます。
ミヒャエル=エンデの『鏡のなかの鏡』も必ず挫折します。
さて、この作品はやや読みづらい方かなと思いきりゃ、すんなりと読めました。
ちょっと文語調なのですが、それが読みづらいという印象ではなく、世界感を作るのに役立っていると感じました。
和風ファンタジーな内容で、底辺にあるテーマは梨木さんの他の作品と通じていると思います。
『裏庭』では照美が鏡の中の不思議な世界を旅しますが、
今回はおっさんが木の穴の向こうの不思議な世界を旅します。
不思議の国のアリスの和風バージョンでしょうか。
今は家族を持たないおっさんの、過去とつながった世界を濃厚にさまよっていく、おもしろい作品でした。
絵本だと和風の雰囲気って出しやすいでしょうけど、
小説で和風の雰囲気を存分に醸し出すのは難しそう。
そこで、文語的な『和』の言葉の力を借りながら、見事に世界感を築きあげています。
でも、この作者の作品を読んだことのない方は、『裏庭』や『西の魔女が死んだ』から読み始めた方が良いと思います。
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