この時期、うちにはたくさんのダンゴムシとワラジムシが出る。
ベランダに数えきれないくらいいるのはもちろん、部屋の中で見かけるのも1日10匹は下らないだろう。
足の下でガリッとゴミを踏んだような感触があって、確かめてみるとダンゴムシを踏んでいた、なんて経験もある。
対策として、部屋の隅にマーガリンの空き箱が置いてある。
口を一部カットしたもので、フタの方でダンゴムシをツンツンし、箱に転がし込み、そのまま窓から外へ捨てる。
「捨てる」と言っているが、逃がしてやるのだ。
私の育った実家では、祖父母と同居だった。
そして私はおばあちゃん子だった。
祖母はゴキブリ以外の虫は極力殺さなかった。
ムカデなども、箸で挟んで溝に捨てていた。
「捨てる」と言っているが、逃がしてやるのだ。
同じ地球上に生きるものとして、無用な殺生は避ける。
などという高尚な考えがあったかどうかは不明だが、昔の人ってそうやって自然と共存していたのではないだろうか。
ただ、ゴキブリに関しては目の敵にしており、見かけたら素手でバンバン叩いて潰していた。
いくら祖母を慕っているとはいえ、あれだけは決して真似できない……。
そんな祖母なら、ダンゴムシやワラジムシごとき素手でつまんで捨てるのだろうが、私や妻になると、先述のマーガリンの箱が必要となるのだ。
そんなある日、娘スザンヌが
「あっ! ダンゴムシっ!」
室内でいち早くダンゴムシを発見。
ここでパパの出番。マーガリンの箱でサッと処理するのがお約束だったのだが、
この日はパパより早くスザンヌがダンゴムシに近づき、ひょいとつまみ上げる。
子供ってわりと平気で虫をつかんだりする。
大人になるとできなくなるんだけどね。
「スザンヌ、そんなに強く握ったら、ダンゴムシつぶれちゃうよ……」
まだ、力の加減がよく分からないらしい。
そのまま窓の外へダンゴムシをポイッと捨てて、何事もなかったかのように遊び始めるスザンヌ。
先日まで虫を恐れていた娘の姿に、小さな成長を感じたその数日後のこと。
いつものように私がダンゴムシの処理をしていると、娘が神妙な顔で話しかけてくる。
「ねぇ、パパ……」
「なあに?」
「あのね、ダンゴムシ捨てないで」
「え?」
「スザンヌねえ、ダンゴムシさわって、お友達になるから、ダンゴムシ捨てないで……」
真面目な顔をしてそんなことを言ってきた。
「そっかー、スザンヌはダンゴムシとオトモダチになりたいんだー?」
「うんっ!」
笑顔で返事する娘の前では、否定の言葉は意味を持たない。
もうダンゴムシ捨てれないな……、困ったことになった(^^;
これから、ダンゴムシが出てきたらどうしようか。
放っておくのも気持ち良くない。
私としては、あまりオトモダチになりたいタイプではないのだ。
きっと、皆さんもそうでしょう?
早く梅雨が明けて、ダンゴムシたちには姿を消して欲しいものだ。
娘と仲良くなりすぎる前にね。